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『音楽の未来』レポート 博報堂「コンテンツビジネスラボ」~サブスクリプション時代における消費行動の変化とヒット予測とは?



 株式会社ニューズピックスとBillboard JAPANによる、これからの音楽のあり方について考える【音楽の未来~NOW PLAYING JAPAN~】が、2019年8月から10月にかけて、全3回開催された。10月7日に開催された第3回目のカンファレンスでは、過去2回に引き続きモデレーターとして音楽ジャーナリストの柴那典氏を迎え、博報堂のプロジェクト「コンテンツビジネスラボ」で生活者の意識・行動を研究する博報堂 研究開発局 GMの木下陽介氏と、同局研究員である谷口由貴氏の3名が登壇。サブスクリプション時代における消費行動の変化とヒット予測をテーマにセッションが繰り広げられた。

サブスクリプション・ユーザーは世帯年収が比較的高い、有望なマーケティングターゲット

柴 那典:音楽のこれからを話すときは、3年くらい前までだと、「これからはストリーミングの時代になる」という結論で終わることが多かったですが、去年ぐらいから、それは未来ではなく現実になっています。ですので、日本ではまだまだCD市場が大きいですが、ストリーミングがこの先普及していくことに関しての議論はいらなくなった前提で、その先の話をしたいと思います。まず木下さんと谷口さんの調査で、音楽・映像・スポーツなどの様々な分野にあるサブスクリプションのサービスでは、ユーザーの消費意識に特性があることが分かったそうですが、そのあたりを教えてください。

木下 陽介(博報堂 研究開発局 GM):簡単にデータを交えながらお話ししたいと思います。音楽のプラットフォームは色々あると思うので、OR条件でくくって調査すると、2019年2月では2,889万人がストリーミング・サービスを利用していて、CDやダウンロードで購入している人よりも多くなっています。そして、CD・ダウンロード・ストリーミング利用者の重なりを見てみると、ストリーミングのみの利用者が全体の音楽利用者の中で約半分を占めています。これを見るだけでもストリーミング・サービスがかなり音楽のインフラになってきたことが感じ取れると思います。

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出典:博報堂DYメディアパートナーズ・博報堂「コンテンツファン消費行動調査2019」

木下:次に、どのような人がストリーミングを使っているかを性・年代で見てみると、30代・40代も多いのですが、男性10代・20代と女性10代・20代が全体の4割を占めており、比較的若い人が使っていることがわかります。さらに特徴的なのが、ストリーミング・ユーザーの世帯年収が普通の音楽利用層と比較すると高いことです。

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出典:博報堂DYメディアパートナーズ・博報堂「コンテンツファン消費行動調査2019」

木下:つまり、ストリーミングは音楽ファンにとって重要なインフラとなり、さらに若年層の利用者が多く、実はその人たちはお金を持っているターゲットであることがわかります。若年層を攻略するにあたっては、“若者はお金がない”という点がマーケティングにおいて課題になっているのですが、実は「サブスクリプション×若者」だと比較的お金を持っていることになります。ですので、ビジネスをする上で非常に重要なターゲットなのではと思っています。

:お金を持っているからサブスクリプションのサービスに毎月1,000円払えると考えることもできますね。

木下:そこもあると思います。ただ、無料でストリーミングが利用できる場合もあるので、全然お金が取れないのではないかという話を結構聞くのですが、意外とそうではないことが今回の調査で分かります。

:音楽業界では、10~15年前くらいから「音楽にお金が払われない」とよく言われていました。ですが、これは僕の肌感覚ですが、払わない人は昔から払わないと考えています。テレビの歌番組を見ていた人もテレビにお金を払っていたわけではないですし、宇多田ヒカル『First Love』は約700万枚売れてメガヒットになりましたが、700万人というのは当時の人口で考えると大体100人中7人です。なので、そもそも音楽にお金を払う人はボリュームゾーンではないというのが僕の考えです。ですので、サブスクリプションはお金を払うゾーンに選ばれていると僕は捉えています。

木下:僕らも最初に調査していたときには、“vs CD”みたいな構図になるのかなと思ったのですが、実はそうではなかったというのが大きなポイントかなと思います。

:サブスクリプション・ユーザーの消費意識に関して、もう少し詳しく教えてください。

木下:こちらもデータを基にお話ししていきたいと思います。これは先ほどの世帯年収の話と関わってきますが、音楽に対して年間どれくらい支出しているのか聞いたところ、サブスクリプション・ユーザーは音楽利用層の約1.5倍と、かなり大きな金額になっています。さらに我々の調査では、どこにお金を使っているのかを、放送・マルチデバイス(有料課金)・リアルイベント・パッケージ・レンタル・雑誌・グッズなどに分けて調査したところ、非常に面白いのが、有料デバイスの課金だけでなくリアルイベントのライブやパッケージ、そしてグッズにもお金を払っていることが分かります。また、音楽以外のコンテンツにもお金を払っているか調査したところ、ゲームであったりスポーツであったりタレントであったりと色々なところに支出していて、コンテンツ全般への支出に明るい層であることが分かります。さらに、ユーザーの意識で特筆すべきなのが、「今まで利用していなかった新しいコンテンツを利用することが増えた」という声や、レコメンドの精度に関しては色々言われているものの「コンテンツ提供サービスのレコメンドを利用することが多い」という声が普通の利用層より多いことです。

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出典:博報堂DYメディアパートナーズ・博報堂「コンテンツファン消費行動調査2019」

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出典:博報堂DYメディアパートナーズ・博報堂「コンテンツファン消費行動調査2019」

木下:まとめますと、やはりストリーミング・サービスのユーザーは新しいアーティストとの出会い求めていることが分かります。これまでの10代への音楽マーケティングといえば、やっぱりCMソングやドラマのタイアップでした。そこから新しいアーティストを知り、CDを買い、ファンになった人はライブに行くという感覚だったと思います。ですが今、ストリーミング・サービスがまず音楽の基地みたいになっていて、そこで音楽を聴いてからグッズを買ったりCDを買ったりライブに行ったりするのが音楽行動の基本になっているのではないかということが1つ仮説として出てきます。なので、ストリーミング・ユーザーに対してアーティストのエンゲージメントを高めることが出来ていれば、CD・グッズ・ライブへの消費喚起は十分に可能だと考えています。さらに、ほかのコンテンツへの消費意欲も高いので、コンテンツコラボレーションみたいな企画も有効だと思います。

:僕からの補足ですが、音楽ストリーミング・サービス自体がプラットフォームを指向している動きがあります。例えばSpotifyは、自身が推すニューカマーをセレクトしたライブをやっています。また、日本ではローンチされていないですが、海外ではYouTube Musicからチケットやグッズが買うことができる導線もあります。つまり、ストリーミング・サービスでアーティストを聴くことは、そのアーティストをお気に入りに登録することにつながり、そこから登録したアーティストの音源以外の情報がユーザーに届くようになっています。なので、ストリーミング・サービスはひとつのハブになっている。その結果としてCDはTシャツやポスターなどと並んでグッズの1つになると僕は思っているのですが、そのあたりはいかがでしょうか。

木下:ここはディスカッションしたいポイントになってきますが、今でもストリーミングを解禁していないアーティストがいたり、ストリーミングとVRなどの先進的なテクノロジーを使ってエクスペリエンスを提供するような事例が少なかったりすると僕は思っていまして。Billboard JAPANさんとSPACE SHOWER TVさんが企画・制作しているライブイベント【NOW PLAYING JAPAN】では、音楽ストリーミング・サービスで最も再生数の多い1組がイベントに出れるという企画をやっているのですが、例えばそういったストリーミングを絡めたライブイベントに来た人にしか買えないプレミアムCDをセールスすることをリンケージする、そういった事例がまだまだ足らないなと思っています。そのあたり、柴さんのご意見を伺いたいなと思っています。

:ストリーミング・サービスは日本だと2015年くらいにローンチされて、CMなどではストリーミング・サービスのキャッチコピーとして「聴き放題」という言葉が使われていたと思います。聴き放題ということ自体はサービスの打ち出しとしてもちろん正しいのですが、実は魅力はそこではないと僕はずっと思っていまして。「ストリーミング・サービスだと何百万曲が聴き放題」と言われても、実際に何百万曲も聴けないですよね。むしろ、まだ知らないけど聴いたら好きになるタイプの音楽にどう出会わせてくれるのか、そして、その導線をサービス側がどう提供してくれるのかがリスナーにとってすごく重要なはずです。CDを売るのとストリーミングで聴いてもらうのはどちらもアーティストやレーベルにとって利益になる以上、新曲と出会い、ファンになってもらうための導線がまだしっかり整備されていないという状況は問題提起としてありうると思います。

木下:ストリーミングのランキングの上位にどのようなアーティストがいるのかとか、こんなプレイリストに入っている曲は何なのかとか、レコメンドで新しい曲を教えてもらうとかの情報をリスナーは本当に求めているんですよね。ここは、今までのテレビ番組の主題歌と同じ構造だと思っているので、この先どのように工夫していくのか議論が必要です。加えて、ストリーミング・ユーザーはSNSを比較的使っているというデータが出てきているので、例えばハッシュタグを使って何かマーケティングするなどといった新しいことを考えていく必要があります。

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様々なクラスタにアプローチしたあいみょん

:参加者から「ヒットって予測できるんですか?」という質問が来ていますので、ぜひこの話の流れに入っていきたいなと思います。まず、ストリーミングによって音楽の売れ方、つまりヒットの仕方がどう変わったのかを教えてください。

谷口 由貴(博報堂 研究開発局 研究員):Billboard JAPANさんとの共同研究から、具体的なアーティストの事例を出してストリーミング時代のヒットを紐解いていきたいと思います。まずとりあげるアーティストは、あいみょんです。

:あいみょんはストリーミング・サービスで火が付いた日本で最初のアーティストと言われています。改めて説明するまでもないですが、去年「マリーゴールド」で火がついて、『NHK紅白歌合戦』にも出演しました。

谷口:ビルボードの2019年上半期ストリーミング・ソングスのランキングでは1~4位をすべてあいみょんの楽曲が占めています。また、2019年上半期トップアーティストにもなっているくらいの人気を誇っています。

:ただ、補足すると、「マリーゴールド」はCDでは大きなヒットを生みませんでした。ビルボードの週間シングル・セールス・チャートでは初週32位です。

谷口:あいみょんはストリーミングが強いアーティストです。注目すべきは「マリーゴールド」が配信されたタイミングでして、この時に他の楽曲もストリーミング・チャートで再浮上しています。同様に、その後「今夜このまま」が配信されたタイミングでも、別の楽曲がさらに浮上していますね。そして、最初にランクインしていた楽曲はその後もランクインし続けるといった状況になっています。ですので、ストリーミング時代においては新曲が出るたびに過去曲が再浮上して、1回ランクインの波に乗れるとずっとランクインし続けるといったヒットの仕方が多いと思います。

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:僕が注目してみたいのは、2015年にリリースされたインディーズデビュー曲「貴方解剖純愛歌~死ね~」です。僕はこの曲を出した当時のあいみょんにインタビューしたことがあって、そのときは全く無名でした。LINEの会話風ミュージックビデオや、サビで「死ね 私を好きじゃないのならば」と歌う過激な歌詞が特徴で、正直、当時はここまで売れると思っておらず、ヒットを予測できなかったです。その後、2016年に「生きていたんだよな」でメジャーデビューし、そして「君はロックを聴かない」あたりから、「あいみょんっていいよね」「最近いい曲出してるアーティストいるよね」って世間がザワザワし始めた。そして、谷口さんがおっしゃったとおり、「マリーゴールド」のヒットによって過去曲の「君はロックを聴かない」や「生きていたんだよな」に加えて「貴方解剖純愛歌~死ね~」も聴かれるようになりました。このように一つのヒットをきっかけに過去曲が聴かれるようになって利益を出すというのは、CD時代とは違う曲のロングヒットの在り方が出てきているということですよね。


▲あいみょん「貴方解剖純愛歌 ~死ね~」

谷口:ストリーミング以外のビルボード・チャートの各指標とウィキペディアのPV数を見てみると、例えば、初登場したテレビ朝日の『ミュージックステーション』や『NHK紅白歌合戦』(紅白歌合戦)といったテレビ露出があった場合、ウィキペディアのPV数が瞬発的に伸びて、その1週間後あたりから徐々にストリーミングが伸びていきます。ストリーミングの場合、どちらかというと階段状にどんどんベースラインが積みあがっていく形で伸びていくのが特徴です。このような階段状になるのは、リスナーがある程度定着しつつ、さらに新しいリスナーが増えているからだと思います。

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谷口:なぜそうなったのかを解剖していくと、まずあいみょんは結構異なるターゲットを狙ったプロモーションをしていたことが挙げられまして。例えば、漫画とのコラボでストーリーと歌詞をリンクさせた曲を作ってマンガ好き層にアプローチしたり、先ほど柴さんがおっしゃったようなメンヘラ歌詞で放送自粛になるような曲がSNSでバズって10代を中心に聴かれるようになったり、平井堅さんのように有名アーティストがプッシュすることでそのアーティストのファンにアプローチしたり、ファッションに興味がある層でも、アプローチしていなければあいみょんを聴かなかったかもしれない人たちに向けて『装苑』や『GINZA』といった雑誌への露出やReebokのスニーカーとのコラボを行なったりしていました。そして、最終的には『紅白歌合戦』に出演してマスを取りにいっています。このように、いろいろなところから音楽の趣味嗜好と関係なくジャンルレスにリスナーを取りにいっていまして、それが成功したのかなと思いますね。

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木下:SNSで色々なところに人が分散している現在の状況においてはこういうアプローチが有効なんだということが、いろいろなデータを見て分かってきたことです。我々広告会社としてもマーケティングの仕方を変えていかないといけない如実な事例だと思います。

:「あいみょんは売れたよね」ということはみんな分かるけども、今おっしゃったように実は様々なクラスタからの支持を積み重ねていったということが1つのポイントですね。

谷口:インスタのストーリーズも直接Spotifyに行けるような仕組みになっていますので、「この曲めっちゃいい!」って友達と共有しあっているのも大きいと思います。

:参加者から「『紅白歌合戦』で一気に父親世代も理解するようになりましたが、テレビの影響はどれくらいありますか?」という質問が来ています。父親世代というのは、まさにレイトマジョリティですよね。

谷口:『紅白歌合戦』放送後にストリーミングも伸びていますので、まさしくですね。

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ヒットの前に支持を固めていたKing Gnu

:様々なクラスタにアプローチし、ソーシャルによる1対1の情報伝達で支持を固めた上で、マスメディアに露出してレイトマジョリティを取りにいく。そういう階段方式になっているということですね。これはあいみょんだけでなく、他のアーティストでも見られると思います。今年のブレイクで言うならば、King Gnuだとどうでしょう。

谷口:先ほど2019年上半期ストリーミング・ソングスのランキングでは1~4位をすべてあいみょんの楽曲が占めていると言いましたが、5位にランクインしているのはKing Gnu「白日」です。ストリーミングの話に戻りますが、King Gnuの楽曲は「J-POP好き」「J-ROCK好き」といった音楽ジャンル別のプレイリストはもちろんのこと、ヒット曲をおさえたい人向けや情報通向けといった音楽ファン度によって分けられているプレイリストや、「お花見にピッタリ」や「サッカー応援」や「パーティーを盛り上げる」といったその時々のムードに合わせたプレイリストなど、幅広いプレイリストに入っています。それによって、King Gnuに流入していく人の数も種類も増えていくことになりますね。まさにプレイリストはご新規さんへの接点となっているわけです。ですので、今はプレイリスト・マーケティングが必須の世界になっていると感じます。

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:ストリーミング・ユーザーでない人にとってプレイリストが接点になるということはイメージしづらいかもしれませんが、CDショップの入り口にある試聴機をイメージしてもらえればと思います。ただ、実際の試聴機には3~5枚くらいしか置けないですが、アプリの世界だとプレイリスト内でずらーっとたくさん曲を並べることが出来ます。そして当然、各ストリーミング・サービスのフォロワー数の多いプレイリストの1番いい場所にどのアーティストを配置するかという、注目の奪い合いになっているのではないかと思います。

谷口:今度は楽曲別のストリーミング・チャートとウィキペディアのPV数、そしてTwitterのツイート数で見ていきます。大きなイベントとしては、フジテレビのアニメ『BANANA FISH』のエンディング曲や、日本テレビのドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』の主題歌に選ばれたことが挙げられますね。そのあと『ミュージックステーション』に2回登場しています。このように大きなイベントがいくつかあるのですが、現在までの1年半を大きく3つのフェーズに分けると、それぞれのフェーズで違うファン層を取りにいっていることが分かります。例えば、私は『BANANA FISH』が放送される前後でそれぞれKing Gnuのライブに行ったのですが、放送前はまだみんなが発掘できていない新しい音楽を常に探している人たちが多く、終了後はアニメカルチャーが好きそうな人たちが増えていることを肌で感じました。また、3つのフェーズで獲得した新規ファン層のペルソナを作ってみたのですが、最初の層は音楽ディグ層、次の層は2.5次元ドハマり層、そして最後はJ-POP好き層といった形で、それぞれのフェーズで違う層を取りにいったと思います。

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:ここでポイントになるのは、評価を固めた上で露出を広げるという積み重ねになっていることですね。今テレビがどういう役割を果たしているかをもう少し詳しく見ていくと、まず『関ジャム 完全燃SHOW』という日曜深夜に放送されている番組が、さきほどのペルソナで言う「音楽ディグ層」の間で重要な番組になっている。それは『バズリズム02』でも同様です。なぜかというと、これらの番組では、音楽の世界で名の知られているプロデューサーがネクストブレイク候補のアーティストをランキング形式で紹介していて、ここでいち早く紹介されたのがKing Gnuなんです。つまり、『イノセンス』が放送されていたときには、「音楽ディグ層」の中ではすでに「こいつらは次に絶対くる」といった評価が完全に定まっていたということです。あいみょんも同じなのですが、「マリーゴールド」が世間に広まったときにはすでに「君はロックを聴かない」で支持が固まっていた。そのような積み重ねになっているのがポイントだなと思います。


▲King Gnu「Prayer X」

木下:「次はこのアーティストが来る!」というのは、webやストリーミングがない時代だと雑誌・専門誌がその役割を担っていました。しかし、今では逆にテレビがその役割を果たしているのが面白いです。あと、テレビで見た人が「このアーティスト誰だろう?」とか「Twitterでどういう投稿がされているだろう?」って思ったときに、2018年の投稿や『BANANA FISH』をやっていたときの評判をweb上で検索して見ることができ、「こういうアーティストなんだ」と認識するような行動をしていると感じます。それが今までと違うところかなと。

:今までもヒットするコンテンツは必ず感想をTwitterで検索されている傾向があるので、たとえ露出が大きくてもガッカリ度のあるツイートやブログが散見されると熱は冷めていきますよね。

木下:テレビに出ているのにあまりセールスにつながっていないアーティストの要因も分析しているのですが、大きく違うのはテレビに出る前にちゃんと評判を形成している点でして、そこが大事かと思います。

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来年もOfficial髭男dismの時代になる?

:そしてもう1つ、Official髭男dismの話もしたいと思っています。Official髭男dismは2019年下半期にブレイクしている新人ですね。

谷口:ヒゲダンは最近ストリーミングが急激に伸びているのですが、その前に月9の主題歌や、そのドラマを映画化したときの主題歌、そしてテレビ朝日系列の『熱闘甲子園』の主題歌というように、1年半という短い間で3つの大きな主題歌が決まっています。それが急速にリスナーを獲得した要因なのかなと思います。

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:Official髭男dismもメジャーデビュー前の2018年3月に『関ジャム 完全燃SHOW』に初出演していて、それ以前に音楽プロデューサーの蔦谷好位置さんが紹介しています。やはり最初の布石として効いているタイプの番組ですね。で、ヒゲダンがなぜブレイクしたのかということについて僕が音楽ジャーナリストとして考えているのは、ひょっとしたら時代の反動がそこにあるかもしれないということです。あいみょん・King Gnu・ヒゲダンに共通するポイントは“歌”なんですね。5~8年くらいさかのぼって考えると、AKB48や三代目 J SOUL BROTHERSなど多人数グループがヒットの中心だったのが2010年代の前半の傾向でした。しかし、去年から今年にブレイクしたアーティストを見てみると、ヒゲダンはバンドではありますがボーカルの藤原さんの歌がとても上手く、東京藝大の声楽科を卒業しているKing Gnuの井口さんも卓越した声の表現力を持っている。あいみょんもシンガーソングライターとして基本的に歌と言葉の魅力が強い。ある種、シンプルな歌の力みたいなものがここ1、2年はずいぶん注目を集めるきっかけになっているぞと思います。

谷口:そうですね。特にストリーミングは耳で聴くだけのものですので、YouTubeやライブと比べるとよりそういう要素が重要になってくるのかもしれないですね。

:AKB48や乃木坂46といったグループアイドルの時代は、いわばYouTubeの時代で、ダンス動画を見てみんなが踊ることでヒットが生まれるという時代だったのですが、今は“聴く”ことでヒットが生まれ始めていますね。


▲Official髭男dism「Pretender」

木下:僕の仮説で、King Gnuはちょっと違うかもしれませんが、「カラオケで歌える」と思わせているのも影響があるなと思っていまして。さらにいうと、僕は42歳なのですが、40代以上でも受け入れられるようなアーティストですよね。なおかつカラオケでも歌えるという点が、若者じゃない人たちも取りにいける大きな要因かなと感じますね。

:言ってしまえばミリオンヒットを連発していた90年代のヒットの方程式に近いかもしれないですね。音楽に詳しい人がきっちりとオススメする、ラジオでヘビーローテーションになる、そこからテレビの音楽番組に出る、ドラマの主題歌になるといったオーソドックスなヒットの道のりがもう1度生まれているように感じます。

谷口:ストリーミングだけの時系列グラフを見てみますと、ここでもあいみょんのときと同じように「Pretender」の配信が開始されたタイミングで別の楽曲が再浮上し、次に「宿命」が配信されるとさらにそれらがランクアップし、そして上位に居続けるといった現象がここでも起きています。

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:ヒゲダンに関しては、あさって(10月9日)に「Pretender」や「宿命」も収録されているメジャー1stアルバム『Traveler』が発売されるので、予言しておくとビルボードの総合アルバム・チャートで首位を獲るでしょう(※10月21日付総合アルバム・チャートで首位を獲得)。そして、「Pretender」と「宿命」は、さらにストリーミングの再生数を伸ばしていくでしょう。なので、下半期はヒゲダンがヒットチャートを席巻すると予測しています。

谷口:そろそろあいみょんのストリーミング・ソング・チャート連続首位記録(20週)も越されるのではと思います(※10月21日付ストリーミング・ソング・チャートで「Pretender」が21週連続首位を記録)。

:さらに注目すべきは、ヒゲダンはまだ『紅白歌合戦』に出ていないところです。まだ発表されていないですが、これも予言しておくと、おそらく出場は決定的でしょう。そして、そこが「なんとなく曲を聴いたことはあるけれど歌っている姿は見たことがない」というレイトマジョリティ層への認知のきっかけになる。なので、去年の米津玄師やあいみょんが初めて『紅白歌合戦』に出たときに父親・母親が「これいい曲だね」って言うような現象がおそらく今年の年末に起こると思います。なので、おそらく「Pretender」は来年の上半期もロングヒットを続けると思っています。

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次にヒットするアーティストは?

:せっかくですから、「ヒゲダンやあいみょんの次には誰が来るの?」っていう話をさわりだけでもしませんか?

谷口:そうですね。いくつかのアーティストにヒットの傾向が見えてきてるのですが、ビルボードのラジオ指標は特に音楽通の影響が反映されているので、早くヒットの兆候が表れる指標として注目しています。ですのでラジオ指標とストリーミング指標をかけあわせて秘密の方程式を作り、次にヒットしそうなアーティストを何組か選んできました。では、どれにしましょうか。

:じゃあ、ヨルシカでお願いします。ヨルシカは今後より注目を集めると僕は思っています。ヨルシカは、ボカロPであるn-buna(ナブナ)と歌い手であるsuis(スイ)の2人組で、顔を出していません。また、中には実写もありますが、基本的には動画はアニメーションです。つまり匿名性の高いアーティストでして、すごく物語的な強度の高い楽曲を作っています。そんなヨルシカが、今年の春から夏にかけて、10代を中心とした若い層、いわゆる文学少年少女たちに大きく支持を広めています。

谷口:ヨルシカも時系列で見てみると、ストリーミングというよりダウンロードで指標が高く出ています。私がヨルシカを知ったきっかけはTikTokで、そこで「ただ君に晴れ」という曲が使われてバズったりもしていまして。そういうところから若い人たちに届いているのはあると思います。

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▲ヨルシカ「ただ君に晴れ」

:TikTokってすごく面白いアーキテクチャーですよね。一般的にはリア充というか、自撮りが得意な女の子たちが使っているイメージがあると思うのですが、使われている曲がいわゆるパーティーチューンかと言われると、それだけではないですよね。

谷口:そうですね。HoneyWorksも決して最近の曲ばかりではないですが、流行っていて驚きましたね。

:もう1人はちゃんみなをお願いします。もともとはヒップホップの分野から出てきた女性ラッパー/シンガーソングライターで、過去には“練馬のビヨンセ”というキャッチコピーでバラエティー番組にも出たりしていましたが、どんどん音楽的な才能が認められてきています。僕の勝手なイメージとしては、かつての尾崎豊的な10代のアウトサイダーのカリスマになりつつある感じがします。

谷口:10代の間で流行る曲って今まではJ-POPだったと思うのですが、最近だとK-POPが入ってきています。K-POPには北米音楽シーンの要素を含んでいることもあって今の10代はヒップホップに馴染みがあるのか、このようなアーティストが人気みたいですね。

木下:【ROCK IN JAPAN FESTIVAL】でもたくさん人が入っていたようです。

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▲ちゃんみな「Never Grow Up」

:彼女はもともとK-POPにもルーツがあるし、僕が観た初ワンマンではお客さんはギャル文化に属するタイプの人がほとんどでした。ただ、今は邦楽ロックフェスのリスナーという別のクラスタに支持を広げている。そう考えると今後ちゃんみなはレイトマジョリティに刺さる可能性が十分にあります。とはいえ、「先はどうなるかわからない」というカオス的な現象がヒットの本質なので、まったく予測していない他の誰かがブレイクする可能性は大きくあります。駆け足でしたがこんな形でヒット予測とストリーミング・ユーザーの消費動向ということでお話しさせていただきました。ありがとうございました。

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