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ドレイクやソニック・ユースも影響源、!!! (チック・チック・チック)最新作『シェイク・ザ・シャダー』インタビュー



!!! 来日インタビュー

 グルーヴ感とパンク精神を兼ね備えた楽曲の数々で、一躍2000年代初期のNYディスコ・パンク・シーンにおいて時の人となりつつも、多様化する音楽シーンの中、着実に進化を続け、独自の音世界を提示してきた!!! (チック・チック・チック)。そんな彼らにとって7枚目となる最新スタジオ・アルバム『シェイク・ザ・シャダー』が完成した。“恐れを振り払え”と題され、変化を恐れずに突き進むことをテーマとした今作は、20年間に渡り唯一無二のキャリアを築いてきた彼ららしい作品だ。ハウス、オルタナ、ポップなどを!!!流に調理し、バンドの幅広い音楽性をさらに拡張した快作をひっさげ、2017年2月後半にプロモーション来日したフロントマンのニック・オファーに話を訊いた。

純粋にいいレコードが作りたい
ライブ映えする、ファンキーな作品を

――前作から1年半~2年ほどの早いスパンで、最新作『シェイク・ザ・シャダー』が完成しましたね。

ニック・オファー:そう、あっという間で、ある時「え、もう完成してるんじゃない?」って感じだったね。俺たちって、アルバム制作に取り掛かると、いつもたくさん曲を書くんだ。前作の時は40曲近く書いたんだけど、今回は20曲ぐらい書き上げた時点で、もうこれで精一杯出しつくしたって感じた。曲作りを頑張るのは好きなんだけどね…いいフィーリングが得られるから。

 プロデュースは、パトリック・フォードが手掛けたんだけど、彼と作業するのが面白いのは、俺たちのこと完璧に理解してない部分があるから。過去2作を彼と一緒に作ってるから、気が置けない仲間ではあるんだけど、彼は根本的にポップ畑の人間なんだ。俺たちは俺たちで、ヘンテコな音楽をポップ・ミュージックのフォーマットにフィットさせようとしてるから、いい相乗効果が生み出せてる。

――今回も前作同様に、ライブで新曲をプレイして、形にしていくというアプローチをとったんですか?

ニック:そうだよ。ブルックリンのユニオン・プールを一週間ブッキングして、毎晩新曲をプレイして、そのままスタジオに入って曲をレコーディングしていった。今となっては他のやり方は考えられない。俺たちの中ですごく確立された手法になってるから。

――ライブで演奏する時点で、曲はどの程度完成しているんですか?

ニック:ほぼ完成している。大体の場合、変更するのはごくわずかだな。例えると、新しいジーンズの履き心地をよくしていくイメージだね。そこまで大きな変化はないんだけど、だんだん自分に馴染んでいくような。新曲しかやらないから、観客にとってはこれまで観たことのないバンドを観るようなもので、曲にとっていい試練になると思うんだ。初めて聴いた曲でも、いい曲だったら反応が得られるから。まぁ、中には「“ジュリアーニ~”やれよ!」とか野次を飛ばしてくるやつもいるけど。

――(笑)。オーディエンスのレスポンスを反映したりは?

ニック:毎晩演奏していると、この曲は反応がいいとか、この曲はそうでもないとか、おのずと見えてくる。このパートに入るとダレてくるから、ここはカットしたほうがいいとか。曲を編集するという意味合いが大きいな。特に反応が良かったのは、「Throw Yourself In The River」、「Dancing Is The Best Revenge」…この曲は次のシングルになる。後は「Throttle Service」。逆に、スタジオで作った「The One 2」とかはまだライブで演奏したことがないから、今後プレイするのが楽しみだね。前作からの「All You Writers」とか前々作の「Slyd」なんかは、完全にコンピューターで作った曲だけど、ライブでやりだしたら、一番楽しかったんだ。



▲ 「Dancing Is The Best Revenge」MV


――なるほど。作品の方向性は、どのように具体化していったのですか?

ニック:アルバムを作る時は、必ず大前提として、前作を上回るものを作りたいのと、あとクラブ・レコードを作りたいというのがある。と思ってても、実際完成した作品を聴いて「これクラブ・レコードじゃないじゃん」って場合のが多いけど(笑)。今回も前作でやったようにいろんな人に聴いてもらって、20曲の中から収録曲を選んでいったんだ。その中にクラブっぽい曲もいっぱいあったらから、クラブ・レコードに成りうる可能性もあったんだけど、最終的には選ばれなかった。何よりもまず純粋にいいレコードが作りたいんだ。これまでやってきたことにさらに磨きをかけ、ライブ映えする、ファンキーな作品をね。バンド史上最高にキャッチ―なレコードと言っても、ビートルズの作品に匹敵するようなキャッチ―さからは程遠いからさ。

――確かに、過去の作品をベースに着実に音楽性をアップデートしていますよね。逆に、180度異なる作品にすることは考えたりする?ステレオラブのカヴァー・バンドをやっていたのは、その意味合いもあったり…?

ニック:ハハハ。あれは自分たちをチャレンジしたかったからなんだ。バンドの柔軟性と演奏力を高めるために。それと…「サポート・アクトにこのバンドはどう?」とか朝っぱらからメールで送ってくるんだけど、どれもクソみたいバンドばっかりでさ。だったら、いっその事自分たちでやった方がいいショーになるんじゃない、ってことでやったんだ。

――なかなかもどかしいですね。

ニック:そりゃ、俺だってダーティー・プロジェクターズとかにサポート・アクトをやってもらいたいよ。今朝ちょうど新作を聴いてて、すごく気に入ってるんだ。でも彼らは自分たちのヘッドライン・ショーをやるクラスのアーティストで、現実的に無理だ。サポートをしてくれるような若くて、いいバンドがいれば、それが一番いいんだけど、思うほど簡単じゃないんだ。




――「ジュリアーニ~」以降、あまり政治的な楽曲を発表している印象がなかったのですが、現状の政治情勢を受け、意識することはありましたか?

ニック:アルバムを制作していた時、俺たちは全員、女性の大統領になると純粋に信じていて、ヤツはすぐに消えると思っていた。さっき話した、新曲ばかり演奏するライブをやった1週間の初日がまさに大統領選の日だった。ステージに上がる直前に、出口調査の結果が報道され始めて、なんだか嫌な空気になっていったけど、とりあえずショーはプレイしようってことになって…今考えても信じられない結果だ。彼を弾劾する方法についての話や動きが活性化してるし、そう長くはもたないと思うから、いい方向に向かうことを祈ってる。彼がやる事なす事が面白おかしいと、エンタメ的に捉えてた人が多かったのも大統領選に勝った要因だと思うんだ。ヒラリーの方が頭脳も経験値もあった…なのに勝てなかったのは、マス・メディアや現代文化も関係してるって。

――ちょっとしたことでもすぐに“meme”化され、面白おかしく発信される時代ですからね。

ニック:“meme”はある意味、新たなアートフォームだと思うんだ。アートを通じて政治性を訴えることは可能…友達とよく議論するんだ。“meme”は鎮撫する方法のひとつなのか、って。誰もがスマホの画面を通して彼のことを馬鹿にして、軽視した。実際は真剣に向き合わなければならなっかたのに。でも、彼の愚かさを知ってもらうには、“meme”化する以外に方法がないんじゃないか、とも思うんだよね。

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1曲目にドラム&ベースっぽい曲を持ってくることで、
みんなの期待を裏切りたかった

――前作では初めてAbletonを取り入れていましたが、今回、新たに取り組んだこと、挑戦したことがあれば教えてください。

ニック:常に新しいことを学んで、音楽に取り入れる努力はしてる。YouTubeでチュートリアル・ビデオを見たり…ひとつクールな技を習得すると、全部の曲で使いたくなる。だから、次のアルバムを作るときにまた新たな技を学ぶんだ。その積み重ね。前作でAbletonと使い始めて、今回はそれをさらに探求したのに加え、サンプリングすることで、アルバムにユニークなサウンドを注入していったんだ。前作で焦点をあてたコード進行は、より水面下に沈んだ印象だな。

――そのチャレンジ精神は、『シェイク・ザ・シャダー』というアルバム・タイトルからも伺えますね。

ニック:新しいことに挑戦したり、新たなこと学んだりするのは、いつだって少し怖いものだ。「めんどくさいから家でウダウダしてたい」って思う時もあるけど、そんな自分を駆り立ててクラブに行って、自分の知らなかった曲や新しい曲を聴くと気分がアガルし、行って良かったと思える。自分を駆り立て、その恐れを振り払うことが大事なんだ。それにフレーズのリズムも気に入ってるしね。

――年齢を重ねることで、創作活動に対する見解は変わってきましたか?

ニック:そうだな~。若い頃だったら、出かけないで音楽を作ることに専念しなきゃ、って思いつつも、毎晩夜遊びしてベロンベロンになってたけど、今はそれがプライオリティではない。NYに引っ越したての頃は、それが“健康的”だと思ってた。若かったから、夜な夜なパーティーするのがエキサイティングだったんだ。

――90年代当時のクラブやライブ・シーンも、エキサイティングなものだったと思いますし。

ニック:今もエキサイティングだと思うよ。当時に比べると…う~ん、どうなのかな(苦笑)。俺たちはサクラメントからやってきたばかりキッズだったから何でもかんでも素晴らしく感じたのかもしれないけど、全然つまんないって言ってた地元の人たちもいたし。NYCに関して、色眼鏡がかかってる部分があるのは認めるけど、今となってもNY以上にエキサイティングな場所って実際問題ないような気がするんだ。LAもLAでね…。ただ、唯一恋しいと感じるのは、バッタリ道で会った知り合いに「明後日ライブやるから観に来いよ」って言われて観に行ったら、スゲーライブだったとか、そういうのは今はないね。

――90年代といえば、「Throw Yourself Into The River」のライナーで昔MTVで放映されていた『120 Minutes』を引き合いに出していたのが興味深かったです。サーストン・ムーアがベックをインタビューする的な、オルタナ色が強いユルイ番組ですよね。

ニック:まさにそんなサウンドじゃん、サーストンがベックをインタビューしてるような(笑)。俺を含むメンバーの何人かは、ソニック・ユースがフェイバリット・バンドの一つで、実際にギターを「100%」みたいにしてほしいって、エンジニアに聞かせたんだ。『120 Minutes』っていうと、俺的には1987~1990年ぐらいの印象が強いな。その頃が番組の黄金期で、ベックはもうちょっと後で、オルタナがメインストリームになってきた時代を象徴してる。1987年からの3年間ぐらいは、TOP40ヒット曲は含まれない、まさに“オルタナ”の時代だったからね。



▲ 「100%」MV / Sonic Youth


――なるほど。現代のポップ・ミュージックを参照した部分はありましたか?前作ではオートチューンを使ったり、ラップからの影響も伺えましたが。

ニック:カニエ・ウェストの『ザ・ライフ・オブ・パブロ』が、ツアーをしてた時にリリースされて、よく聴いていたから、その通りだね。最新作だと、1曲目の「The One 2」はドレイクが参加した(ビッグ・ショーンの)「Blessings」に影響されてる。あのコーラス最高だよね!前作のレコーディングの終盤に、ラファエルと車に乗ってる時に初めて聴いたんだけど、ブッたまげた。オルタナ・ソングだと、コーラスに入るとみんな一斉に楽器をかき鳴らすじゃん?その真逆で、コーラスに入ると一気に静かになって、ドレイクのヴァ―スが際立つ。だから俺たちもそれと同じことを冒頭の曲でやったんだ。これもさっき話した新たな技の一つだよ。1曲目にドラム&ベースっぽい曲を持ってくることで、みんなの期待を裏切りたいというものあったしね。



▲ 「The One 2」MV


▲ 「Blessings」MV / Big Sean ft. Drake, Kanye West


――やはり、そこは常に意識しながら創作活動を行っているんですね。

ニック:ビートルズだってそうじゃん。アルバムをリリースするたびに、聴き手をアッと言わせることをやり続けた。『ヘルプ!』の後に『ラバー・ソウル』をリリースして、みんながそれを真似しだしたら、次は『リボルバー』で再びみんなをアッと言わせた。ビートルズのように偉大になることは難しいと思うけど、作品を作るんだったらそれぐらいの目標を掲げないとね。

――他に参照した作品はありますか?または、よく聴いていたものは?

ニック:ドレイクとリアーナの「Work」。ツアー中、ライブが始まる前と終わった後、毎日のように聴いていたから、同行していたシンガーに「もういい加減にして!」って言われたよ(笑)。ちょうどリアーナのアルバムがリリースされた頃で、めちゃめちゃハマっちゃってさ。

――女性シンガーが同行することが多いので、いっそのことカヴァーをしてみてもよさそうですが。

ニック:いや~、無理!完璧すぎるもん。あんなグルーヴ感そうないよ。言葉でうまく表現できないんだけど。



▲ 「Work」MV / Rihanna ft. Drake


――そういえば、新作には、女性シンガーが多数フィーチャーされていて、「What R U UP 2 DAY」にはラファエルの愛娘も参加しているんですよね。

ニック:そうなんだ。ある日、「俺が親バカなだけなのかもしれないんだけど、娘が作ったこのトラック良くない?」って聞いてきて(笑)。そしたら意外と良くって、これは完成させなきゃ、って思ってさ。あのパートは彼女が全部自分で書いたもので、「パパ、私の声をスピーカーから鳴らしてみて」って言われたらしいんだ。さすがに4歳だからAbletonを使ってレコ―ディングすることはできないからね(笑)。それをチョップアップして曲に使ったんだ。

――昨年は数多くの伝説的なアーティストが他界し、年末にはジョージ・マイケルも急逝しました。そんな中で、思うことはありましたか?

ニック:実は昨年のクリスマス、アルバムの制作をするために一人でNYに残ってたんだけど、エンジニアにドタキャンされたから『ムーンライト』を観に行ったんだ。カミングアウトや男性としてのアイデンティティを描いている作品だから、映画が終わってケータイの電源を入れた時にNYタイムズからの訃報のアラートや友人たちからメッセージが届いていたのを見て胸が痛んだ。彼もプリンスのように一人で息を引き取った。みんなプリンスが孤独だというのは知っていたけれど、あそこまで孤独だったのは知らなかったと思う。ジョージは壮絶な人生を歩んできて、ドラッグや色々問題を抱えていた時期もあるけれど、そこからは自身のアイデンティティやカミングアウトすることに対する葛藤も感じ取れる。映画の主人公と重なる部分があって、余計辛かった。たくさんの才能溢れるアーティストたちがこの世を去ってしまって、すごくタフな1年ではあったけれど、彼らの作品を聴いて、その才能を再認識することで少し心が落ち着いたという感じだな。

チック・チック・チック「Shake The Shudder」

Shake The Shudder

2017/05/19 RELEASE
BRC-545 ¥ 2,376(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.The One 2
  2. 02.DITBR (Interlude)
  3. 03.Dancing Is The Best Revenge
  4. 04.NRGQ
  5. 05.Throw Yourself In The River
  6. 06.What r u up 2Day?
  7. 07.Five Companies
  8. 08.Throttle Service
  9. 09.Imaginary Interviews
  10. 10.Our Love (U Can Get)
  11. 11.Things Get Hard
  12. 12.R Rated Pictures
  13. 13.Anybody’s Guess (Bonus Track for Japan)

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