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トータス 来日記念特集~サウンド追求の旅を続けるポスト・ロックのパイオニア

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 トータスは、昔も今も面白い。ポスト・ロックの先駆者であり、シカゴ音響派の首領である彼らは、1990年代初頭に颯爽と現れシーンの一時時代を築いた。そして、音楽性はもとよりバンドのあり方やレコーディング方法まで、多くのミュージシャンたちに深い示唆を与えてきた。20年以上もの間、第一線で最前衛を歩み続けるトータスの歴史を振り返る。

CD
▲『Tortoise』

 トータスのルーツを辿ると、1980年代末にまで遡る。イレヴンス・ドリーム・デイというオルタナティヴ・ロック・バンドに参加していたベーシスト、ダグ・マッコームズが、レゲエを得意としていたドラマーのジョン・ハーンドンと出会い、デュオで活動をスタート。その後、ポスト・ハードコアの雄といわれたバストロのメンバーから、ドラムスのジョン・マッケンタイアとベースのバンディ・K・ブラウンの2人、そしてパーカッション奏者のダン・ビットニーが参加。シカゴのアンダーグラウンド・シーンの猛者が集まったグループとして、徐々にその名を広めていく。

CD
▲『Millions Now Living
Will Never Die』

 新興レーベルのスリル・ジョッキーと契約したトータスは、1993年にアルバム『Tortoise / トータス』を発表し、本格的にデビュー。ざらっとしたオルタナティヴな質感のバンド・アンサンブルによるインストゥルメンタル・ナンバーは、ジャズから現代音楽までを内包する個性的なものだった。この作品が高く評価されたことを受け、1996年にはさらにその音楽性を研ぎ澄ませたセカンド・アルバム『Millions Now Living Will Never Die / ミリオンズ・ナウ・リヴィング・ウィル・ネヴァー・ダイ』を発表。バンディ・K・ブラウンが脱退し、デイヴィッド・パホが加入という変化を経ての初作品となった。殺伐とした雰囲気のデビュー作に比べると、シロフォンの音色を加えるなどカラフルな印象を残す。なかでも20分にも及ぶ大作「Djed / ジェド」のインパクトは大きく、この一曲でポスト・ロックというジャンルを確立したといっても過言ではない傑作といえるだろう。




CD
▲『TNT』

 しかし、トータスはこの成功に甘んじてはいなかった。デイヴィッド・パホが脱退し、ジェフ・パーカーが加入。1998年にはサード・アルバム『TNT』を発表して、さらにシーンに衝撃を与えることとなる。というのも、生演奏によるセッションをベースにしていた彼らとしては、当時はまだ珍しかった全編プロトゥールスを使ったハードディスク・レコーディングを敢行。緻密なデスクトップ上の編集作業によって、トータスならではの即興的な世界観を保ちながらも、エレクトロニカやアンビエント、クラウト・ロックまで含め、あらゆるジャンルを取り込んだ傑作に仕上げている。



▲ 「Swung From The Gutters」(Live)


  この頃には“シカゴ音響派”という言葉が日本の音楽シーンを席巻し、トータスを中心としたピープル・ツリーが注目されていく。ジョン・マッケンタイアも参加したザ・シー・アンド・ケイク、そのメンバーでもあるサム・プレコップとアーチャー・プレウィット、バストロのデヴィッド・グラブスが中心となって結成されたガスター・デル・ソル、そして日本でもおなじみのジム・オルークなどが続々と力作を発表し、耳の肥えた音楽ファンから熱狂的に受け入れられていく。トータスのメンバー自体も様々なセッションやプロデュースに参加し、シカゴ音響派という渦の中心になっていった。



▲ 「Afternoon Speaker」The Sea and Cake


CD
▲『Standards』

 しかし、トータス本体は、21世紀に入ると少し落ち着きを見せ始める。2001年に発表した4作目の『Standards / スタンダーズ』は、原点回帰といわんばかりにアナログ録音へと戻り、鋭角的なサウンドを意識しながらも、バンドのグルーヴを重視したセッションを行っている。また、2004年の5作目『It's All Around You / イッツ・オール・アラウンド・ユー』では、これまでの総決算ともいうべき完成度を誇るが、ポスト・ロックもシカゴ音響派も鳴りを潜めつつあり、以前のように目新しさを感じさせる存在ではなくなっていった。




CD
▲『Beacons of
Ancestorship』

 とはいえ、トータスの実力はそこで終わるものではなかった。2006年にはウィル・オールダムの別名義であるボニー・プリンス・ビリーとの共演作『The Brave And The Bold』で、ミルトン・ナシメントやエルトン・ジョン、ディーヴォなどのカヴァーを披露した。そして、2009年には6枚目となるアルバム『Beacons of Ancestorship / ビーコンズ・オブ・アンセスターシップ』をリリース。従来のポスト・ロック的なプロダクションはもちろん根幹にはあるが、パンクやヒップホップなどのエッセンスも取り入れたサウンドで、新しいステージに移行したことを感じさせた。

 7年ぶりのリリースとなった2016年の7作目『The Catastrophist / ザ・カタストロフィスト』は、またもやトータスの変化を物語る作品となった。緻密なサウンド・プロダクションのイメージからは少し離れ、シンプルなサウンドとメロディアスな楽曲が増え、いわば彼らのなかではかなりポップなイメージのアルバムに仕上がっている。ミニマルな分、それぞれの楽器の音色が際立ち、映像的なサウンドを聴かせてくれるのだ。しかも、ヨ・ラ・テンゴのジョージア・ハブレイを招いたヴォーカル・ナンバーもあり、過去作品にはない色合いを感じさせてくれた。




 このように、リリースごとに変化してきたトータスだが、そのライヴ・パフォーマンスもますますブラッシュアップされている。基本的にはツイン・ドラムスによるバンド・スタイルで、インプロヴィゼーションを交えた演奏が繰り広げられるのだが、各々が楽器を持ち替えたり、ミニマルな世界から突如として壮大なアンサンブルへなだれ込んだりと、予想を超える何かが起こるというのが彼らのライヴの持ち味。けっして、過去の演奏をなぞるようなことをしないのだ。また、そのダイナミックなバンドの演奏は、昨今の新しいジャズ・シーンとも呼応し、ポスト・ロックのムーヴメントとはまた違う意味を新たに持ったといえるだろう。まもなくビルボードライブでの来日公演が行われるが、なぜトータスは今も有効なのか、ぜひその理由を確かめにいってもらいたい。



▲ Tortoise Boiler Room x FORM Arcosanti Live Set

トータス「ザ・カタストロフィスト」

ザ・カタストロフィスト

2016/01/06 RELEASE
PCD-24454 ¥ 2,592(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.ザ・カタストロフィスト
  2. 02.オックス・デューク
  3. 03.ロック・オン
  4. 04.ゴウファー・アイランド
  5. 05.シェイク・ハンズ・ウィズ・デンジャー
  6. 06.ザ・クリアリング・フィルズ
  7. 07.ゲシープ
  8. 08.ホット・コーヒー
  9. 09.ヤンダー・ブルー
  10. 10.テッサラクト
  11. 11.アット・オッズ・ウィズ・ロジック
  12. 12.ザ・ミステリー・ウォント・リヴィール・イットセルフ (トゥ・ユー) (日本盤のみのボーナス・トラック)
  13. 13.ヤンダー・ブルー (インストゥルメンタル) (日本盤のみのボーナス・トラック)

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