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ブランドン・コールマン 来日公演レポート Text by 柳樂光隆(Jazz The New Chapter)

ブランドン・コールマン | 2016.4.9(土)at ビルボードライブ東京

8周年を彩った二人の「現在進行形」

 まさかのカマシ・ワシントンのサプライズ出演で大きな話題になったブランドン・コールマンの来日公演。昨年のカマシ・ワシントンの『The Epic』への参加や、それに伴うカマシ・ワシントンのバンドの来日への同行、デビューアルバム『Self-taught』のリイシュー、更に次作はブレインフィーダーのリリースが予定されていることなどで注目度が一気に増した後のタイミングでの来日で、しかもカマシが全面で参加するなんて!と、会場全体が興奮に満ち溢れていた。

 今回のライブを単純に言えば、『Self-taught』のライブ版で、『Self-taught』のサウンドを生で再現しつつ、同時に、カマシ・ワシントンとの来日でも見せたキーボーディストとしての圧倒的なソロパフォーマンスをも披露していくといったものだった。ノードやローズと言った鍵盤で柔らかな音色を奏でつつ、ヴォコーダーで声を変えて歌うスタイルは、彼が敬愛するハービー・ハンコックが70-80年代に見せてきたスタイルを思い起こさせるもの。ブランドンは、ハンコックへのリスペクトを表明するかのようにハンコックの『Mr.Hands』に収録されている<Textures>のカヴァーを披露したりと、全体的にはコズミックなファンクサウンドが中心となっていた。とはいえ、ただ過去のスタイルをトレースするだけではない。LAのミュージシャンは口をそろえて、LAは様々なジャンルが自由に入り混じるところが魅力だというが、このブランドンのバンドもまさにそう。ファンクやディスコ、フュージョンというのが根幹にはあっても、そこに現代的な要素がいくつも入り込んでいたのが印象的だった。

 例えば、ギターのサミル・ムレイはファンクマナーで前に出てソロを弾くというよりはカッティングでリズムに徹する場面が多かったが、時折エフェクターを切り替え、空間系のエフェクトをたっぷりかけたサウンドをサイケデリックに彩っていたあたりはインディー・ロック的なセンスを感じたし、ドラムのロバート・ミラーは、ファンクビートの中にも、ゴスペル由来の現代ジャズ~生演奏ヒップホップ・スタイルのビートを織り交ぜていた。ジャスティン・ブラウンやロナルド・ブルーナーJrを思い起こさせるタムを効果的に使った重くて太いドラミングは、コンテンポラリー・ジャズ色の強い東海岸=NYの軽やかさとは違う、フュージョン系譜の西海岸=LAのドラマーのキャラクターを存分に楽しませてくれた。

 またカマシ・ワシントンは派手なソロで魅せる場面が何度も用意されていて、それだけでも最高だったが、個人的には自身のプロジェクトとは違うスタンスで楽曲に“貢献”するスタイルで、その上手さや器用さをたっぷり見せてくれたことがうれしかった。豪快で奔放なイメージが強いが、もともとジェラルド・ウィルソンのビッグバンドにも在籍していた彼は荒々しさをも完璧にコントロールして奏でているテクニシャン。まるでマイケル・ブレッカーのように淀みなくスムースに吹きながら、必要とされればファズのペダルを踏んだかのように即座に音色を潰してみせる。ブランドンの歌に合わせてオブリ(主旋律に寄り添うように複旋律を奏でる)をする場面など、即座に音色を柔らかく切り替え、ブランドンを引き立てる彼の丁寧さや繊細さにこそ、カマシのスケールの大きさが出ていたように思う。ちなみにカマシ『The Epic』収録の名曲<The Rhythm Changes>のブランドン・アレンジでのカヴァーなど、うれしいサプライズも。幾度となく演奏を共にしている気心の知れた仲間だからこその自然な演奏にLAのコミュニティーの繋がりの深さも感じられた。

 ラストではブランドンがショルダーキーボードを手に取り、キーボードによるエレキギターサウンドを奏で、超絶テクニックのギターソロセッションを繰り広げて〆。

 彼らの技術水準の高さと、それを最大限に生かしつつ、センス良くまとめた楽曲の完成度の高さ。それらに加え、ライブならではのダイナミックなステージングで、彼らの魅力を存分に楽しませてもらった。

 これからもロバート・グラスパー『ブラックレディオ』にも起用されていた注目の3人組キング、ケンドリック・ラマー作品のプロデューサーにして、カマシ・ワシントンらと共演する気鋭のサックス奏者でもあるLAシーンの最重要人物テラス・マーティン、ケンドリック・ラマーからアンダーソン・パークなどに立て続けに起用されている新進R&Bシンガー、BJ・ザ・シカゴ・キッド、そして現代ジャズのキーマン、ロバート・グラスパー・エクスペリメントと、ブランドン・コールマンやカマシ・ワシントンとも共振する高い音楽性と圧倒的なライブ力を持つアーティストたちの来日が控えている。見逃せない公演が今後も続く。

柳樂光隆(なぎら・みつたか)
ジャズとその周りにある音楽について書いている音楽評論家。1979年島根県出雲生まれ。世界にも類を見ない現在進行形のジャズ・ガイド・ブック『Jazz The New Chapter』シリーズ監修者。現在、第3弾『Jazz The New Chapter 3』が好評発売中。CDジャーナル、JAZZJapan、intoxicate、ミュージック・マガジン、BRUTUS、ユリイカなどに執筆。ライナーノーツ多数。

公演情報

ブランドン・コールマン

ビルボードライブ東京
2016年4月9日(土)
1stステージ開場17:00 開演18:00
2ndステージ開場20:00 開演21:00

ビルボードライブ大阪
2016年4月11日(月)
1stステージ開場17:30 開演18:30
2ndステージ開場20:30 開演21:30


今後の公演情報

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BJ The Chicago Kid

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