Billboard JAPAN


HotShotDiscs

ジェフ・バックリィ「ユー・アンド・アイ」

ユー・アンド・アイ

ジェフ・バックリィ               

2016/03/16 RELEASE

Track List
ザ・スミス、ツェッペリン、スライ…数々の名曲と1人で渡り合う“天才”を伝える貴重な記録作

 父ティム・バックリィと同じく、シンガーソングライターとしての才覚を広く賞賛されながらも、1997年、ミシシッピ川での水難事故により、父同様に早世してしまったジェフ・バックリィ。不世出のシンガーとして現在も支持を集め続ける彼だが、生前のオリジナル・アルバムは1994年作『Grace』のみであった。その後、未発表音源集やライヴ音源もリリースされてきたが、この2016年に突如として、新しいアルバムが公開されることになった。それがこの『You and I』である。

 本作はロック/ポップの名曲カヴァーを中心に収録した内容で、『Grace』製作よりもやや遡った時期のレコーディング・セッションで残されたトラック群らしい。素朴なギター弾き語りがメインだが、いきなりボブ・ディラン「Just Like A Woman」の後半、昂ったファルセット歌唱が迸る。ジェフ・バックリィでしかありえない、美しくも儚い、ある種の畏怖さえ抱かせるような凄みに満ちた名演だ。

 スライ&ザ・ファミリー・ストーンの「Everyday People」は、軽やかなギターのボディノックとカッティング・リフに彩られ、楽曲の温かみのある力強さを引き出している。ルイス・ジョーダンが歌った「Don’t Let the Sun Catch You Cryin’」は1940年代のR&Bヒットで、トラックに残されたコメントによればレイ・チャールズのヴァージョンも参考にしているらしい。この辺りの選曲では、ソウルフルな楽曲をジェフ流に料理するさまが聴きどころである。

 「Grace」のアコースティックなデモも素晴らしく、アルバム後半には「The Boy with the Thorn in His Side」、「I Know It’s Over」といったザ・スミスのカヴァーも2曲収録。モリッシーという名ヴォーカリスト、そしてジョニー・マーという名ギタリストのコンビにたった一人で渡り合ってしまうようなパフォーマンスはどうだろう。面白いのはレッド・ツェッペリンの「Night Flight」で、原曲はベーシストのジョン・ポール・ジョーンズが舵取りを行った、ツェッペリンには珍しいオルガン・ポップだ。選曲/アレンジの妙にも唸らされる。

 個人的なジェフ・バックリィへの思い入れを込めて書くと、彼の死後にリリースされた未完成の音源集『Sketches for My Sweetheart the Drunk』(1998)が僕はとても好きで、その荒削りのままの息遣いが溢れ出す感触と、本作『You & I』はよく似ている気がする。好きな楽曲を思うままに、伸び伸びと歌うジェフ・バックリィ。とても高い価値のある記録だ。(Text:小池宏和)

Special Contentsmore

FM COCOLO『J-POP レジェンドフォーラム』9月は桑田佳祐『がらくた』特集! 片山敦夫と斎藤誠をゲストに迎えた番組トークvol.1を公開
FM COCOLO『J-POP レジェンドフォーラム』9月は桑田佳祐『がらくた』特集! 片山敦夫と斎藤誠をゲストに迎えた番組トークvol.1を公開
キーボードの片山敦夫と、ギターの斎藤誠が『がらくた』の中から好きな曲をピックアップし制作秘話などを語る―。
トレヴァー・ホーン『ザ・リフレクション』インタビュー~世界的プロデューサーが語る初のアニメ・サントラ制作
トレヴァー・ホーン『ザ・リフレクション』インタビュー~世界的プロデューサーが語る初のアニメ・サントラ制作
曲作りやプロデュースのときでも、脳裏に浮かぶ映像がヒントになる
【Live Music Hackasong 参加企業インタビュー】
【Live Music Hackasong 参加企業インタビュー】
ワン・トゥー・テン・ホールディングス
中村雅俊 『どこへ時が流れても/まだ僕にできることがあるだろう』インタビュー
中村雅俊 『どこへ時が流れても/まだ僕にできることがあるだろう』インタビュー
「今この瞬間をどう生きるか」
楽園おんがく Vol.38:ヤギフミトモ インタビュー
楽園おんがく Vol.38:ヤギフミトモ インタビュー
「今までとは違った表現や歌詞の内容も違うメッセージの楽曲を作っていきたい」
全米ALチャート首位獲得!LCDサウンドシステム『アメリカン・ドリーム』発売記念特集
全米ALチャート首位獲得!LCDサウンドシステム『アメリカン・ドリーム』発売記念特集
シーンへの本格的な復帰を果たした21世紀最高のロック・バンドの魅力に迫る
フェニックス 来日インタビュー
フェニックス 来日インタビュー
トマ&クリスチャンが語るライブ体験と尽きないチャレンジ精神。
新世代ジャズとテラス・マーティン ~来日直前インタビュー&プレイリスト
新世代ジャズとテラス・マーティン ~来日直前インタビュー&プレイリスト
なぜいまテラス・マーティンに注目すべきなのか

Chartsmore